池口研での2年間

島田 裕

学部3年生の皆さん,こんにちは.博士前期課程 1年の島田です.私は2年前の2007年3月に池口研究室に配属され,現在はカオスを複雑ネットワークの視点から捉える研究を行っています.

私は3年生のとき,「ネットワーク」という言葉をキーワードに研究室を選びました.当時の私はネットワークについて書かれた本から影響を受け,ネットワークに興味を持っていたからです.そこで,非線形システム概論の講義で,池口先生が複雑ネットワークの講義をしていたこともあり,池口研究室を第一希望に選びました.また,池口研究室に入れば海外発表に行ける可能性が高いということも噂で聞いていたので,池口研究室を選んだもう一つの理由でした.私は旅行に行くのがすごく好きで,いつも色々なところへ行って自分が知らない世界を見てみたいと思っています.研究室を選んだときも,「この研究室に入れば,色々なところに行ける!」とそう考えました.実は研究テーマとしてネットワークを考えていたというのは単なる言い訳で,自分の知らない土地に行きたいという思いで研究室を選んだような気もします.

研究室に配属されてから研究テーマが決まるまでは,池口先生や先輩方から基本的なことを色々と教えてもらいました.池口研究室の計算機ではApple製のマシン上で最新のMac OS Xが動いていますが,それらの使い方や,C言語でのプログラムの書き方,シェルの使い方,スクリプトの書き方など,研究を始めるまでに,また研究中に必要となる基本的なことです.また,複雑ネットワークについてもこの時に基本的なことを勉強することができました.

最初に私は「ネットワークに興味を持っていた」と書きましたが,今のレベルから考えると単に興味を持っていただけでネットワークのことについて当時は何ひとつ知らないと言っていいほどでした.しかし,複雑ネットワークを題材とした研究室内でのプログラム演習などを通して,池口先生や先輩方に一から複雑ネットワークについて教えてもらうことができました.このときに初めて,複雑ネットワーク研究の歴史的な背景から過去10年で大きく発展した複雑ネットワークの分野についての概要を知ることもできました.そういった基本的なことが分かってきたときに,研究のテーマが決まりました.そう,私が文頭で書いたカオスを複雑ネットワークの視点から捉えるという研究です.

私の場合,研究のテーマを決めるのにほとんど悩まなかったと思います.私の研究テーマは,池口先生に「これおもしろそうじゃない?」と言われ,「おもしろそうですね!」と私が答えて,そのときに決まりました.そのときに決まったテーマは,「今まで全く別の世界のものと思われた複雑ネットワークと決定論的カオスを結びつけ,新たな理論体系を創り出す」という壮大で魅力的なものでした.そこから,複雑ネットワークとカオスを結びつけるための研究が始まりました.まだ,ネットワークについて基本的なことしか知らず,カオスについても何も分からなかった私は先生や先輩に助けてもらいながら,なんとかして複雑ネットワークとカオスを結びつけようと研究を始めました.

答えがないことに取り組むのは,楽しい作業でもあり,大変な作業でもあります.四苦八苦しながら研究を進め,結果が少しずつ出てきた頃に,私はプラハ(チェコ)とハンガリー(ブダペスト)で発表するチャンスを頂きました.「海外に行って知らない世界を見てみたい!」そう思って研究室を選んだ私です.チェコとハンガリーという幸運にも2つの海外発表が目の前にぶら下がってからは,どうにかして「海外に!」,なにがなんでも「海外に!」,これは絶対「海外に!」という思いで研究に取り組みました.初めての英語での原稿への挑戦は大変でしたが,最後は気合いで原稿を書き上げました.このときの私は「海外発表」(気持ちとしては海外旅行)で頭がいっぱいでしたが,この原稿を書くために,池口先生や先輩方には本当に多くの場面で助けて頂いたのだな,と後になって感じました.そのおかげで,2008年9月,念願かなってプラハ,ハンガリーを訪れることができました.

知らない言葉と見慣れない顔立ちの人たちが暮らす街を歩き回り,日本とは違う空気を吸い,初めての食べ物を食べる…,そして,初めての英語でのプレゼンテーション,本当に多くの刺激的な経験をすることができました.

こんな刺激的な池口研究室でみなさんも一緒に研究してみませんか?そして,一緒に研究をして,いろいろな世界を見てみませんか?池口研には,それができるだけのエネルギーがあると私は思います.

Copyright © 2007--2011 Ikeguchi Laboratory. All rights reserved.