ブダペスト珍道中

本橋 瞬

私は2年前,2007年3月に池口研究室に配属されました.今,これまでの2年間を振り返ると,短かったような,長かったような….不思議な感じです.ただ,充実した時間だったことは確かです.長くもあり短くもある研究生活ですが,日本の学会での発表(北九州,神戸),国際会議での発表(ハンガリー),ゼミ合宿(仙台)….様々なことがあり,いろいろな場所に行くことができました.

ブダペストの国際会議での発表の時には,いろいろありました.初めての海外にもかかわらず,一人でヨーロッパへ渡り,一人ブダペストで1日過ごすことになりました.本当にいろいろなことがありました….実は,日本を出発するときからそのような予感はありました.南与野からの電車等が遅れて,成田空港での搭乗手続きが閉まる寸前に滑り込みました(最後の一人でした).夜ブダペスト空港に到着して,空港のシャトルバスのカウンターに予約したホテルの名前と住所を見せたら,そんな名前のホテルはないと言われ,その住所付近の別のホテルに送られました(斜向いにありました).駅を探して駅と逆方向に歩いたり(往復1時間ほど),地下鉄を降り間違えたり,乗り間違えたり(その甲斐あってブダペストの地下鉄は完璧に覚えました…).いろいろありました,でもなんとかなりました.他にも,空港の手荷物検査でのデジカメ紛失(したと思ったらバッグの中にあって平謝り)事件や,ホテルの正確な位置が分からなかったり(調べ忘れ),研究室の皆との合流地点が分からなかったり(無計画)など,いろいろな困難が降りかかってきました.これらの試練をなんとか乗り越えて,無事研究室の皆と合流することができ,初海外一日一人旅を終える事ができました.

合流後にも,事件が待っていました.国際会議の最終日に,会場のホテルで爆弾騒ぎがあったのです.最初は火災報知器が鳴り出したので,火事だということでホテルの正面入り口に強制的に避難させられたのですが,実は,ホテルに爆弾をしかけたという電話があったようなのです.警察犬を連れた沢山の警官と消防車等がホテルの周りを取り囲みました.会議の最終日のセレモニーで松浦さんが表彰されるはずでしたが,このために会議の残りの行事が全てキャンセルされてしまいました.しょうがないので皆であきらめて夕食に出かけたのですが,戻ってきた時には東京電機大学の堀尾先生のノートPCが紛失していたり,最後までハプニングの連続となりました.まさに一生に一度あるかないかというようなことを経験できました.

日本に戻ってきてからも,成田空港の麻薬犬に目(鼻?)を付けられ,別の部屋に連れて行かれたりしました(※※帰りにブダペストの空港の免税店で買ったサラミの匂いに犬が反応したためです).荷物をぐちゃぐちゃに調べられたあげく,肉製品は検査証明書がないと日本に持ち込めないということで,サラミは全て没収されました.サラミを購入してから数時間後の出来事でした.「家に着くまでが遠足」は真理だと実感した瞬間でした.

今思い返すと様々な困難がありましたが,(サラミが没収された事以外は)なんとかなってきました.たまたまなんとかなったこともあるかもしれませんが,それは池口研究室での2年間の経験があったからだと思います.

実をいうと,私が池口研究室を選んだのは''なんとなく''です.多くの人は,まだ「この研究がやりたい」という明確な目標がないと思います.私もそうでした.どこの研究室に行っても大して変わらないだろう,と思い,研究室紹介も全体の半分くらいしか見てませんでしたし,池口研究室の研究室紹介にも行きませんでした.

ただ,「ネットワークが面白そう」,そんな理由からネットワークを研究している研究室を選びました.こうして私は池口研究室に入りました.研究室に配属された後,池口先生や研究室の大学院生の先輩方の話を聞いて,最も興味を引かれたのは,ネットワークではなく,組合せ最適化という分野であり,その代表的な問題である巡回セールスマン問題を研究テーマとして選びました.そして現在に至ります.

最初は「なんとなく」でも,なんとかなります.これまでの2年間,大概のことはなんとかなってきました.しかしそれは,やるべきことをやってきたからだと思います.そして,池口研究室には「やるべきことをやれる」環境があります.議論だけでなく,冗談も飛び交う,そんな研究室です.

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