池口研究室を卒業して思うこと

成澤 佳介

成澤 佳介

 これから研究室に配属されるみなさん,こんにちは.池口研究室OBの成澤佳介です. 私は2006年春,学部4年生のときに池口研究室に配属され,2009年3月に修士課程を修了しました. 池口研究室では,カオス的な時系列信号の長期予測の研究を行っていました. 地震や株価などの複雑な振る舞いを示す非線形現象を予測することで,世の中の役に立とうという研究です. 修士課程修了後の2009年春からはNECに就職しています. そこではインターネットサービスプロバイダ「ビッグローブ」の仕事をしています. 仕事の内容としては,インターネットのサービスで用いるサーバソフトウエアの設定や,ソフトウエアの開発,開発管理,技術的な資料の作成などを行っています.

 さて,学部生のみなさんはこれから研究室に配属されるわけですが,「たくさんある研究室の中からどの研究室を選んだら良いのだろう?」と悩んでいるのではないでしょうか. 池口研究室を選ぶことのメリットとしては

  • 池口先生だけでなく,大学院生の面倒見が良い
  • プログラミング能力や各種ソフトウエアの技術スキルが身に付く
  • 議論を積極的に行うことで,論理的な考え方,コミュニケーション能力が身に付く
  • 学会発表を積極的に行うことで,プレゼンテーション能力が身に付く
  • 学会発表で国内,国外を問わず様々なところに行ける
  • 英文輪講,英語での発表練習を行うことで英語力が身に付く
  • 論文を書くことで,文章作成能力が身に付く

などがあります.これらの詳細については,他のOBや現役の大学院生の皆さんが説明してくれていると思うので,そちらを参考にしてください.

 私はOBの立場として,池口研究室を卒業して思うことを述べたいと思います. 結論から言えば,池口研究室に入って本当に良かったと思います. 池口研究室で学んだ3年間はとても濃密かつ貴重で,ここで学んだことが私の社会人としての基礎になっています. 2009年4月に就職してまず始めに,研修がありました. 名刺交換や挨拶の仕方など,本当に基礎の部分から学びましたが,このときから既に池口研究室の効力が現れていました.

  • ビジネス文書作成研修

     主にメールの書き方について学びました. 「タイトルは簡潔かつ一目で内容が分かるように書く」,「最初に宛先を書く」,「その次に差出人を書く」, 「一文はなるべく短く分かりやすく書く」,「段落分けして見やすく書く」などのルールを教わりましたが,私は全て知っていました. 池口研究室ではメールを書く機会が多く,このようなきちんとしたルールも池口先生に教えていただいたおかげで,しっかりと身に付いていました. また,与えられた文章のおかしな部分を修正するという研修もありました. 日本語の使い方がおかしかったり,漢字の間違い,曖昧な表現などを修正していくという内容でした. これも研究室時代に「論文を書き,池口先生や先輩に見ていただき,修正する」, 「後輩の書いた論文を読み,おかしい部分を指摘する」という経験のおかげで難なくこなすことができました.

  • ディベート研修

     あるテーマについて賛成派,反対派に別れ,グループで議論するという内容でした. 池口研究室では日頃から活発に議論が行われ,論理的に意見をぶつけ合うことが多かったので,研修でもしっかりと意見を言うことができました. この研修では賛成派と反対派の両方の立場で議論しました. 周りからは「反対派で勝つのは難しいのでは?」と言われていましたが,どちらでも勝ちました. 学会発表や勉強会での激しい質問攻めを耐え抜くことで,こういった相手の意見に押しつぶされない粘り強さも身に付いたのだと思います.

  • プレゼンテーション研修

     あるテーマに沿って自分の考えを発表する研修でした. これも学会発表や勉強会での発表で鍛えられたおかげで,うまくこなすことができました. プレゼンテーションについては,発表の仕方やスライド資料の作成方法など,池口先生から非常に多くのテクニックを教えていただきました. そのため,講師の方からは「非常に場慣れしている」,「理論的で話がわかりやすくうまい」と褒めていただきました. また,出会って日が浅い同期入社の人たちからも「プレゼンがやたらとうまい人」と認識されたようです.

  • その他

     他にも「上司の話を聞くときはメモを持っていく」,「ほうれんそう (報告,連絡,相談) は重要」,「結論は最初に言う」など, 仕事において重要な多くのことを研修で教わりましたが,これらも全て池口先生から教わっていたことです.

 研修が終わった後はさっそく職場に配属され,仕事を始めました. このときにも池口研究室での経験が役に立ちました. 配属されてすぐに,サーバ用の小規模なプログラムを作成することになりました. 使ったことのない言語で不安でしたが,研究室時代にしっかりとC言語を勉強していたおかげですぐに習得し,プログラムを作成できました. また,仕様書の作成やソースコードのレビューなども行いました. 内容は全く異なりますが,全て池口研究室で経験してきたことです.

 配属されて半年が過ぎた頃,あるサーバ用ソフトウエアを導入するための性能評価を行いました. 「スクリプト言語で大量の命令を作成し,サーバで実行した結果をグラフにし,報告書にまとめて会議で発表する」という内容です. 仕事をしていて「研究室時代と同じじゃ〜ん」と一人笑いそうになりました. 余談ですがこのソフトウエアは2010年4月に無事導入され,現在も毎日休むことなく動作しています.

 社会人2年目になると,より仕事の幅が広がり,ソフトウエアの開発管理を任されるようになりました. 発注先が作成した仕様書やソースコードの確認,修正の依頼などを行いますが,これも研究室時代の延長です. 開発が遅れていたりソフトウエアにバグが見つかった場合,様々な部署とスケジュールを調整したり,予算の交渉を行う必要があります. そのため,それまで以上に多くの人々と関わることが増えましたが,研究室時代に身に付いたコミュニケーション能力のおかげで無事に乗り切ることができました. 今思えば,勉強会や国内外での学会発表で様々なタイプの人々と出会い,交流できたことが役に立っているのだと思います.

 他にもまだまだありますが,細かいところまで挙げるといくらでも書けてしまうのでここまでにしておきます. まとめると,「池口研究室で学んだことは社会に出て本当に役に立つ」ということです. 学部生の皆さんの中には「企業に就職するから研究室は適当に選んでさっさと卒業しよう」とか,「就職するから大学院は行かなくていいや」と思う人もいるかもしれません. しかし,それは間違った考えだと思います. 私は,研究の道を進む,進まないに関わらず,できれば大学院まで進むことを強くお勧めします. そして池口研究室を選んで本当に良かったと思っています. 池口先生の「応用解析学」,「非線形システム概論」,「生体情報工学」を受けた皆さんなら分かると思いますが,池口先生は教育に関して非常に熱心です. 社会に出てから役に立つことを惜しみなく教えてくださいます. 池口研究室での研究生活は,皆さんにとっても一生の財産になると信じています.

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