10年間

保坂 亮介

保坂 亮介

 こんにちは.2006年に池口研を卒業した保坂亮介です. 福岡大学理学部応用数学科の助教をしています. 池口研究室での5年間と,卒業してからの5年間を振り返ってみたいと思います.

 僕は,1996年に埼玉大学工学部情報システム工学科に入学しました. 学部生時代はあまり真面目に勉強をする学生ではありませんでしたね. サークルやバイトばかりしていて,4年生に進学できたのは奇跡としか言いようがないくらいの成績でした. もう少し勉強しておいても良かったなと思いますが,十分に遊んだことも貴重な財産になっています. 真面目にバカをやることと,飲み会の経験はとても役立っています.

 4年生になると研究室配属になりますが,成績が悪かったので,第4志望の吉澤研究室の所属となりました. その選択が今につながるのですから,人生というのは不思議なものです. 卒業研究では神経細胞のシミュレーションを行いました. まだ想像できないかもしれませんが,卒業研究はとても面白かったです. とてもかっこいいことをしている気がして,誇らしくもありました. ですが,研究室に配属するまで大学院のことなんて全然知りませんでしたし,製薬会社から内定もいただいていたので,卒論を書いて就職しました. しかし,就職後,研究したいという気持ちは日に日に強くなり,迷った末,たった三ヶ月で会社を辞めてしまいました. 親は心配だったと思いますが,不思議と許してくれました. そして,修士の試験を受け,2001年から池口研究室で大学院生活を開始しました.

 修士課程と博士課程の5年間はあっという間でした. 大変でしたが,その分だけの成長を実感できた5年間でもありました. 博士課程修了後は,池口先生の御紹介で,池口先生の恩師である合原一幸先生が主宰されている科学技術振興機構の研究プロジェクトに研究員として就職しました. 2009年に理化学研究所に移り,2010年から福岡大学に勤務しています.

 池口研究室には,非線形時系列解析・最適化問題・神経科学・複雑ネットワークなどの4つのテーマがあります. 僕のテーマは神経科学でした. 学生時代は池口研の他のテーマにはあまり関わっていませんでしたが,なんとなく耳に入っていたことが,今になってとても役に立っています. 特に,非線形時系列解析と複雑ネットワークは僕にとってすごく重要になっています. 今は無駄に思えることが意外なところで役に立ちます. 自分の振れ幅を拡げる意味でも,目についたものをかたっぱしから吸収してやろうという意気込みでちょうどいいと思います.

 研究で学べることは,新しい価値を生み出すトレーニングだと思います. 社会でもトレーニングはできますが,利益を出す必要があるため,いま価値がある目の前のものに重点が置かれてしまいます. 大学で学ぶ学問は普遍的なため,地力がつきます. また,企業では仕事が細分化されているため,全体の一部しか学ぶことが出来ません. 一方で,研究ではすべての作業をひとりでこなす必要があるため,全般的な力がつきます.

 大学までは知識を勉強するところですが,大学院は研究最先端の知識を作るところです. 僕も教科書に載るような新発見・新発明を目指しています. 研究が面白いと思ったら,ぜひ大学院に進学して,新しい知識を産み出してください.

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