やればできるようになる研究室

星野 聖

総合演習課題B-1のTAをしていた星野です.認識してくれている人も多いでしょうか?私は,課題Bで皆さんが取り組んだような,組み合わせ最適化問題に関する研究を行っています.もう少し具体的に言うと,課題B-1のTSPに比べて,より現実的な問題である配送計画問題(Vehicle Routing Problem,以下VRP)を対象としています.

VRPについて少し説明します.VRPとは,TSPに対して多くの制約が追加された問題です.まず,巡回するのはセールスマンでなく車で,その車は顧客に物を届けます.当然のことですが,車には重量制限があり,一日で巡回できる顧客数は有限です.そのため,複数の車が必要です.さらに,顧客に時間制約の付いた問題が一般的です.顧客は訪問時間を指定し,その時間にしか運搬車は作業をできません.要は,宅配便の時間指定みたいなものです.VRPとは,このような制約のもとで,最適な配送ルートを探す問題です.

問題の説明が長くなりましたが,何が言いたいかといえば,皆さんが作ったTSPのプログラムは,VRPのプログラムと比べたら非常に簡単だということです.TSPのプログラムに多くの制約を加える必要があるからです.課題B-2を取り組んだ人にも同じことが言えると思います.割り当て問題は比較的プログラムを組みやすい問題だと言われています.さらに,これからは実験でなく研究を行うわけです.自分で考案した手法をプログラムで実現しなければならないため,その難易度はより高くなります.

勘違いしないでほしいのですが,決して「VRPのプログラムを作った俺はスゲーんだぞ!」ってことが言いたいわけじゃないです.正直に言えば,3年生の頃の自分のプログラミング能力は酷いものでした.「関数」の使い方はよく分からなかったですし,「配列」の認識も間違っていました.また,私は3年生までの成績が悪かったので,大学院へ入学するためには試験を受けなければなりませんでした.そのため,8月までは研究をせずに院試の勉強だけをしていました. そんな私でも,卒論として何とかVRPに関する研究をまとめ,さらに卒論の内容を発展させ,電子情報通信学会の論文誌に投稿した論文が採録され,掲載されました.さて,それは何故でしょう?ということが言いたかったのです.

池口研究室には,困ったときに相談できる先生,先輩が常にいます.特に,卒論生に対しては,担当の先輩が必 ず割り当てられます.先生はもちろんのこと,担当の先輩と議論を繰り返しながら研究が進んでいきます.もちろん,特定の先輩だけというわけではありません.何か困ったときには,暇そうにしてる先輩を捕まえてすぐ質問できるような環境が池口研にはあります.プログラミングで困っても,誰かにアドバイスをすぐもらえたというわけです.細かく書くとキリが無いですが,今のプログラムを見返すと,先輩方に教わった知識が沢山含まれています.その知識をもとに,TAとして偉そうに指導していたわけです.それはどうでもいいですね.

プログラミングを例にして書きましたが,研究の内容や進め方についても同様で,相談したいときにすぐ相談ができます.ただ,ここでも勘違いしてほしくないのは,何でも聞いて解決するだけではいけないということです.最初に自分で調べることは非常に重要です.また,質問をするにしても「○○が分かりません.」という聞き方ではなく,「○○が分からず,こう対処してみましたが上手くいきません.」というように,自分でやる姿勢は見せなければなりません.これは質問する側のマナーだと思います.こういった部分も,人と議論を繰り返すうちに指摘されたり,自然と分かってくるようになります.議論の場が多い池口研では,このようなコミュニケーションに関する能力やマナーはかなり向上すると思います.コミュニケーション能力は,研究だけでなく,就職活動などにおいても非常に重要な要素になると思います.

という流れになったので,就職活動についても少し触れておきます.埼玉大学における富士ゼロックスの会社説 明会に来た人は御存知かと思いますが,私は就職活動をあまりしませんでした(爆).研究が忙しかったもので…ただ,研究をしていたからこそ,推薦で内定を貰えたとも言えます.修士学生になると,面接では主に研究内容について聞かれます.面接官は基本的に研究内容を知らないので,自分の土俵で主張ができます.また,論文投稿や,学外発表を積極的に行うので,主張できる研究成果は多くなります.

と,ここまで良いことばかり書いてきた感じですが,結局は努力しなければ何も得られません.相談できる環境があっても,積極的に相談しなければ一人でいるのと同じであり,当然,コミュニケーション能力も向上しません.これは,どの研究室に配属されても同じです.これからは,自分の能力を高めるという意識を持って研究に取り組むと良いと思います.そして,積極的に能力を向上させたい人にとって,池口研は最適な場所だと,この3年間の経験からアドバイスさせて頂きます.

研究を始めると,色々な苦労をすると思いますが,負けずに頑張ってください!

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