大学院へ進学して

芦澤 徹

私が池口研究室に配属されたのは2005年の春でした.この時点ではまだどのような研究がしたいかという明確なビジョンはありませんでしたが,学部3年時の池口先生の講義(非線形システム概論)で,大学院へ進学することの良さを教えて頂いていたので,大学院に行くことは決めていました.

大学院へ進学することで私が良かったと思えたことは二つあります.第一は,しっかりと腰を落ち着けて研究ができたことです.学士で卒業してしまうと,研究できる期間は1年程度しかありません.これでは,大きな研究テーマを掲げることができず,また,濃密で深い研究をすることができません.私は試行錯誤の繰り返しによって良い研究ができると思っていますので,1年という期間はあまりにも短すぎると思います.その点,大学院に進学すれば,少なくとも2年多く研究できます.この2年という期間を使い,私は1年ではできない濃密な研究をすることができたと感じています.第二は,就職活動が学部卒よりも有利に行えることです.学科推薦でかぶった場合でも,学部生より大学院生のほうが優遇されます.また,企業も学部生よりも大学院生を採用する割合のほうが高いようです.実際,私はそれほど苦労することなく,学科推薦で就職先が決まりました.これらの理由から大学院に進学することを強くお勧めします.

私は学部・修士を通して,ネットワーク構造推定というテーマを掲げて研究を行ってきました.ネットワーク構造推定とは,システムを構成する素子から同時計測された時系列データ間の類似度を測り,類似度の高いデータを生成した素子間には結合があると見なすことで,素子間の結合形態を推定することです.観測されるデータには,滑らかで連続な時系列と離散的なスパイク列があります.私は卒業研究で連続時系列からネットワーク構造を推定するために,偏相関係数を用いて推定を行い,偏相関解析の有用性を確かめました.さらに,修士の研究では観測されたスパイク列のみからネットワーク構造を高精度に推定する良い指標が提案されていなかったため,偏相関解析を応用した新しい指標を提案しました.この指標は高精度にネットワーク構造を推定できる素晴らしい指標です.この指標を提案するまでに様々な壁にぶつかりましたが,そのたびに先生や先輩方と議論を行うことで解決していきました.このような内容で修士論文をまとめましたが,現在この内容を原著論文としてPhysical Review誌に投稿中です. また,2ヶ月に一度の頻度で,他大学との合同勉強会を開催しているため,幅広い知識が得られます.

さらに,学会発表にも積極的に参加しているので,就職してからも重要となるプレゼン能力が上がります.その他にも,英文輪講やC言語・シェルスクリプト講座など,皆さんの能力を高めることのできる環境が整っています.皆さんも池口研究室に来てスキルアップしましょう!

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