博士課程への進学

松浦 隆文

松浦 隆文

 学部3年生のみなさん,こんにちは.東京理科大学工学部経営工学科助教の松浦隆文です. 私は2003年度から7年間,池口研究室で過ごしました. 当時の私には,将来,博士課程を修了し,大学の教員になるなんて想像もつきませんでした. 周りの誰にも想像できなかったと思います. なぜなら私の学部生時代の成績はあまり良いものではなかったからです(そのため,修士課程に進学するまでに,2年の歳月を要してしまいました). そんな私がなぜ博士課程まで進学したのか? 今思うと,もし池口研究室に所属していなければ博士課程には進学し,研究者として働くことはなかったと思います.

 私が博士課程に進学した理由は,何よりもまず第一に純粋に研究が楽しかったからです. 私は,8年前の4月,池口研究室の研究室紹介で聞いた,「組合せ最適化問題に対するカオスダイナミクスを用いた解法」について研究したいと思い,池口研究室を希望しました. そして,希望が叶い,私は学部4年時からカオスダイナミクスを用いた組合わせ最適化問題の解法を研究テーマとしています. みなさんが情報工学総合演習課題Bで扱った巡回セールスマン問題は代表的な組合せ最適化問題の一つです. この研究では,これまでの記録を塗り替える世界最高の結果(最短巡回路)を発見できるアルゴリズムを開発することが目的となります. このアルゴリズムを考え世界一を目指すという目標が私の性格に合っていました. どの研究もそうですが,ライバルは世界中にいる研究者です. 世界一を目指すために,研究室に泊まり込み,文献・参考書を読み,シミュレーションを行うこともありましたが,提案手法の性能が向上したときの喜びは全ての苦労を忘れさせてくれます. 残念ながら,まだ,世界一のアルゴリズムは開発できていません.これからも,世界一を目指し,研究活動に励んでいきたいと思います.

 また,私が博士課程進学を決めた理由は,池口研究室に所属されていた大学院生の先輩方に影響を受けたからです. 私が学部生のときは,チューター制度などが無かったため,修士課程,博士課程の先輩と接する機会はほとんどありませんでした. それまで,私の博士課程の先輩方に対するイメージは,会話もなく,一人で研究に没頭し,独自の世界に浸っているといった,マイナスなイメージしかありませんでした. 博士課程に対する良いイメージが無かったため,博士課程まで進学しようとは考えてもいませんでした.

 しかし,池口研究室に配属してから,私の博士課程の先輩方に対するイメージは変わりました. 私が池口研究室に在籍していた間2人の先輩が博士課程を修了されましたが,まず感じたことは,先輩方は実に楽しそうに研究をされていることでした. また,後輩学生の研究に対する助言や指導,論文原稿の添削,発表スライドの修正など,自分の研究以外にも多くのことをこなしているにも関わらず,研究成果を出す先輩方はすごいなと思っていました. そして,いつの間にか,先輩方にあこがれ,博士課程に進学して先輩方のようになりたいなと思いました.

 また,先輩方は研究だけでなく私生活での悩みについても親身に相談にのって下さいました. 私の場合,修士課程の試験に何度も落ちてしまい,進学をあきらめようかとも思いました. そんなとき,保坂亮介さん(現,福岡大学理学部応用数学科助教)に相談し,あきらめずに進学を目指すことを決めました. また,2学年先輩である木村貴幸さん(現,長崎大学工学部電気電子工学科助教)とは,月に1回は酒宴の場を設け,朝までお互いの研究内容について議論しました. 木村さんもカオスダイナミクスを用いた組合わせ最適化技法を研究テーマとしていたため, 自分の考えや方法が正しいかどうか,カオスダイナミクスを用いて効果的な解探索を行なうためにはどうすればよいのか真剣に話し合いました. 木村さんとの議論は,研究成果の大きな割合を占めていると言っても過言ではありません.

 現在,東京理科大学にて助教として従事していますが,これは池口研究室で過ごした7年間があったからこそだと思います. これからは,池口先生のように情熱的な先生を目指して行こうと考えています(ただし,オヤジギャグは除く). 学部3年生のみなさんは,これから研究室が決まり,研究者としての第一歩を踏み出しますが,どの研究室に配属されても有意義な研究生活を送って下さい. それが池口研究室であった場合,有意義な研究生活が送れることを私が保証します. そして是非,博士課程に進学してください.

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