前期の非線形システム概論や後期の生体情報工学などではその重要性を詳しくお話しましたが,

「非線形ダイナミクス!!」

こそが複雑現象の本質であると私たちは信じています. 池口研究室では,神様のチェスの謎を解き明かすべく,「非線形ダイナミクス」に関連した理論を用いて,複雑な現象を対象とした解析や実験によって研究を進めています.

池口研究室では,様々な研究テーマを選ぶことが可能ですが,その大きな理由が非線形現象の遍在性にあります. 私たちの普段の生活には,非線形性とそれが生み出す複雑現象が満ちあふれているからです.

現在,池口研究室では, 以下の三つ研究テーマ, (1)データ工学,(2)数理生体工学,(3)非線形工学を中心にして, 研究活動を行っています. もちろん,これら以外の研究テーマを行うことも可能です.

  • [1] データ工学

    私たちの身の回りには,脳, 神経回路網,インターネット, WWW,人間関係,交通,病気の感染など いろいろなネットワークが存在しています. そして,これらからは時々刻々と変化する複雑な現象が生み出され ています. 池口研究室では, これらの複雑な現象を時系列データ, ネットワークデータとして捉えることで研究を進めています. 様々な事柄が複雑に絡み合い予測不可能とも思われる現象の背後に 潜む法則を解き明かして, 予測・制御・診断などの工学的な重要な課題を解決します.
    • 局所天候予測,降水量予測,風向風力予測
    • 雷発生予測,地震発生間隔・発生規模の予測
    • 膵β細胞の活動電位の統計的解析
    • 交通流量の非線形予測
    • 音声信号,画像信号の非線形予測・合成
    • ネットワーク構造の推定
    • 感染症患者数解析と流行予測
    • 道路網・鉄道網のネットワーク解析
    • ネットワーク論と時系列解析論の融合
    • 複雑ネットワークの時間発展予測
  • [2] 数理生体工学

    私たちの脳の中では, 数十億個の神経細胞が複雑に結びついています. これらの神経細胞は, どのように結びついて情報を処理しているのでしょう? どのような情報処理の原理が用いられているのでしょう? 池口研究室では, 脳内で実際に観測されている学習に着目して研究を進めています. 脳で用いられている情報処理原理を明らかにし, 脳型計算を実現することで, 従来とは全く異なる新しい計算原理の創生を目指しています. また,神経細胞と同様に活動電位を生成する膵臓のβ細胞の 振る舞いをモデル化することで, インシュリンの分泌機構を解明し, 糖尿病治療に役立てようとしています.
    • 脳における記憶・学習機構の解明
    • スパイクタイミングに依存したシナプス可塑性学習により導かれる神経回路網の応答解析
    • 神経回路網における雪崩現象,同期発火現象の解析,一貫性,再現性
    • カオスによるパターン認識,パターン識別
    • ブレーン・マシン・インターフェース
    • 膵β細胞の活動電位の数理モデル化と糖尿病治療への応用
  • [3] 非線形工学

    非線形ダイナミクスから生み出されるカオス現象は, 一見すると予測不能で乱雑な振る舞いを示します. 池口研究室では,非線形ダイナミクスとカオスの工学応用にも取り組んでいます. その一つが巡回セールスマン問題などの組合せ最適化問題を高速に かつ効率的に解くためのアルゴリズムの開発です. また,カオス振動の有する複雑さが, 人体に対してどのような影響を与えるのかという解析も行っています. この解析を通じて, 効果の高いマッサージ機,低周波治療器, 発光装置の開発などにも取り組んでいます.
    • カオスを用いたパケットルーティング
    • カオスを用いた配送計画問題の解法
    • カオスを用いた超大規模組合せ最適化技法
    • カオス低周波治療器,マッサージ機,発光装置,ダイエットマシーン
    • カオス画像圧縮,フラクタル画像圧縮
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