池口研で学んだこと

野村 亮太

野村 亮太

こんにちは.早稲田大学人間科学学術院の野村亮太です.私は,2016年から2018年度にかけて池口研に博士後期課程の学生として在籍しました.ちょうどこの時期,私はある大学で特任助教をしており,社会人と学生を掛け持ちしながら通学していました.なので私の事例は少し特殊ですが,研究室での生活や将来設計になにか役に立てばと思い,研究室の魅力をお話しします.

他大学出身の私が池口研究室を知ったのは,同期現象について調べていたときです.私は,以前から噺家が上手くなる熟達化のプロセスに興味を持っていました.熟達の指標を求めて実験をしてみた結果,うまい噺家の口演を聴いた観客について観察すると,まばたき(自発性瞬目)の増減のタイミングが観客間で一致することが分かりました.ところが,研究はそこで行き詰ります.認知科学の分野の知識だけではそれ以上詳しく研究を進めていくことが難しそうだと感じ始めました.

この状況を打開するためにも同期現象についてもっと理解を深めたいと考え,興味を持った論文の内容やキーワードからヒントを得て“同期”や“非線形時系列解析”を中心に調べていました.そんな時に出会ったのが,メトロノームの同期実験の動画です.この動画を見て,また研究室の紹介ページを読んで,ここならきっと瞬目同期について数理的なアプローチができると思い,勇気を出して池口先生にご連絡をさせていただきました.断られる覚悟で臨んだのですが,温かく受け入れてくださったのは今でも印象に残っています.

進学した当初は,プログラミングもへなちょこでしたが,池口先生や先輩方が優しく丁寧に教えてくださったおかげで,自分の研究に使う分には問題ないくらいまで伸ばすことができました.加えて,博士課程に在籍している際に非線形ワークショップ(旧,非線形問題勉強会)などで研究内容を発表する機会を頂きました.このときにも多くの先生方からたくさんの有益なコメントをいただきました.私は普段から心理学や認知科学といった学会等でもいろんな場で話をさせてもらうのですが,非線形ワークショップでの議論はこれまで経験した中でもトップクラスに刺激的で楽しいものでした.

そうした学術的な活動以外の面でも,研究室のイベントにはいろいろと楽しいこともありました.バーベキューや懇親会などでは,普段は話題に上がらないようなことも(学生という立場を借りて)なごやかに話し,聞くことができました.また,そうやって話をした仲間たちが就職を決め,数年後には立派な社会人としてやっているのを見るたびに,自分のことのようにうれしくなります.このコミュニティに参加できたことが今でもとてもうれしく思っています.

池口研究室での学びは私の現在にもつながっています.池口研究室で数値計算の方法や非線形時系列解析の考え方を学んで,心理学や認知科学一辺倒だった研究の幅が一気に広がりました.また,これまで出会えなかった情報科学や生物学の分野の研究者とも議論ができるようになり,共通理解を持てるようになったことにはとりわけ喜びを感じています.

博士(工学)の学位取得ができたのが幸いしたのか,博士課程修了後すぐに私は鹿児島純心女子大学に赴任することができました.また,2020年4月からは早稲田大学人間科学学術院で准教授として勤務しています.こうした学術的なキャリアを積むことができたのは,池口研究室で学んだことが強く影響していると確信しています.就職を考えている人はもちろん,将来研究職を目指す人にもぜひ池口研究室を選んでほしいと思います.

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