池口研なう!

島田 裕

島田 裕

学部3年生のみなさん,こんにちは!2012年3月に池口研究室の博士後期課程を修 了した島田裕です.FIRST合原最先端数理モデルプロジェクトでの研究員を経て, 現在は,みなさんと同じ,東京理科大学に助教として勤務しています.

さて,みなさんの中にはどの研究室に行こうか悩んでいる人も多いのではないで しょうか?私も学部4年生のときには研究室選びで色々と悩んだのを覚えてい ます.そして色々と考えた末,当時は埼玉大学の池口研究室を選びました.池口 研での生活はとても楽しいものでした.最新の研究課題に取り組んでいるという 少し誇らしい気持ちと,学ぶことの楽しさを体感することができました.国内外 問わず,たくさんの場所へ行き,研究成果を発表しました.池口先生や,研究室 の先輩,後輩たちと楽しい飲み会がたくさんありました.もちろん大変なことも ありましたが,それを乗り越えたことが今では自信につながっています.ここで は,当時の研究室での生活を振り返って,良かったと感じる3つのことについて 書きます.ちなみに,良かったことが3つしかないわけではありません.ここに は書ききれないほど多くのことがありますが,色々書くと纏まりがなくなってし まうので,3つのポイントに絞って書いてみようというわけです.これから書く ことが,少しでもみなさんの研究室選びの参考になればと思います.

しっかりとした基礎が身に付く

研究室で学べることは,研究に関連する内容ばかりではありません.例えば,文 章・メールの書き方,プレゼンテーションの技術です.これらの能力は日常的に 取り組まないことには身に付きません.一方で,困ったことに,自分だけではど のようにするのがベストなのか分からないことが多々あります.池口研では報告 書や論文の作成・プレゼンテーションの機会が数多くあり,文章を書く能力が磨 かれました.また,修士課程に進学後は,文章を書くだけではなく,後輩の文章 を修正するという機会もありました.自分では違和感のある言い回しを修正した ら,実はそれが正しいものだったということも多々ありました.このように自分 の視点だけではなく,他の人の視点も交えながら文章について考える機会も多かっ たと思います.文章を修正するという作業を通して,私の原稿を何度も読んでく ださった池口先生や,博士課程の諸先輩方の苦労の一片を感じることもありまし た.プレゼンテーションでは,スライドの構成から作り方まで,数多くのことを 教えていただきました.発表することで自分の考えを相手に伝えることの難しさ, 様々な人と議論する(コミュニケーションをとる)ことの大切さを実感することが できました.

最新の研究課題に出会える

私は``ネットワーク''という言葉をキーワードの一つとして研究を進めてきて います.ネットワークという言葉を聞くとどのようなものをイメージするでしょ うか?私がここでネットワークと呼んでいるものは, 皆さんが,基礎数学やグラフ理論で習ったグラフとほとんど同じものです. 点と点を辺で結んだあのグラフです. 私はこれらの内容を離散数学という科目名で履修しましたが, 履修していたころは何に使うのか全くわかりませんでした. しかし,このネットワーク (グラフ) が実は日常の様々な場面に登場していたということを知ったときは, とても驚きました. 膨大なウェブページ同士がハイパーリンクで結ばれたWWW, 人と人のつながり, 私たちの脳の中の構成要素である神経細胞のつながりから電力網, 携帯端末などの通信網に至るまで, ありとあらゆる``つながり''が``ネットワーク'' (点と辺の集合) と考えられるのです.しかも, 人間関係などの社会的ネットワークから神経回路網などの生体システム, WWWや電力網などの人工システムと, 一見全く異なる仕組みで生み出されたかのように見える``つながり''の中に 共通の性質があることなどを知りました.このような,たくさんの要素が複雑に つながる現実のネットワークは``複雑ネットワーク''と呼ばれ, その研究は当時も最先端の研究でした.

4年生のとき,池口先生が研究室にふらっと入ってきて,「これ,おもしろそう じゃない?」と言って紹介してくださったのが,この複雑ネットワークと, 非線形時系列解析と呼ばれる方法論を融合する斬新なアイディアでした. この研究は現在, 世界各地のさまざまな研究グループで勢力的に研究されているテーマの 一つです.私が取り組んでいる研究課題もこの研究の発展系と言えるもので, 今の研究を続けられるのも池口先生の慧眼のおかげだと思っています. 現在は, 今までの研究をベースに新たな研究へとチャレンジしています.

貴重な経験を積むことができる

研究をがんばっていると,日本国内のみならず,世界各地で研究成果を発表する 機会がたくさんあります.もちろん研究成果を発表するために行くのですから, 発表までにある程度研究をがんばらないといけませんが,海外に行く経験ができ るというのはとても貴重なものです.私の初めての国際発表の地はチェコ・プラ ハでした.一生懸命暗記したプレゼンテーションを無事に終えると,会場から質 問がきました.それを聞き取れず,もう一度お願いします,と聞き返しているう ちに会場で議論が白熱し,発表者である自分が取り残されてしまうという苦い経 験をしました.当時,英語が聞き取れなかったということもありますが,英語で 話すことに恥ずかしさというか躊躇いのようなものを持っていました.もし,変 な英語でしゃべってたらとか,間違ったら嫌だとか,そういう感情が先に立って しまっていました.しかし,このような経験を繰り返すうちに,そもそも言いた いことを誤解されることや,言いたいことが伝わらないことの方が困るというこ とに気づき始めました.間違った英語でも,話かけるということを諦めてしまう ことの方が恥ずかしいというパラダイムシフトが起こりました.今,それが実践 できているかどうかといわれると,まだまだですが,それでも言いたいことがあっ たなら,英語で話すことを諦めないという努力を心がけるようになりました.こ れも,海外発表での重要な体験の一つです.また,国際会議の合間にその国の色々 な場所に行くこともできました.観光で行くわけではないので,観光ルートとは 違う角度からその国の多様な側面を見ることができ,とても楽しかったのを覚え ています.

以上,私なりの3つの充実ポイントでした.どうでしたか?池口研究室に入って, ぜひ,大学生活の残り1年を,そして修士からの2年間を充実したものにしてくだ さい!

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